マタイによる福音書 QT3 20210114木【もう一人の博士】マタイ2章 1~12
マタイ2章 1~122:1 イエスがヘロデ王の時代に、ユダヤのベツレヘムでお生まれになったとき、見よ、東の方から博士たちがエルサレムにやって来て、こう言った。2:2 「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。私たちはその方の星が昇るのを見たので、礼拝するために来ました。」2:3 これを聞いてヘロデ王は動揺した。エルサレム中の人々も王と同じであった。2:4 王は民の祭司長たち、律法学者たちをみな集め、キリストはどこで生まれるのかと問いただした。2:5 彼らは王に言った。「ユダヤのベツレヘムです。預言者によってこう書かれています。2:6 『ユダの地、ベツレヘムよ、あなたはユダを治める者たちの中で決して一番小さくはない。あなたから治める者が出て、わたしの民イスラエルを牧するからである。』」2:7 そこでヘロデは博士たちをひそかに呼んで、彼らから、星が現れた時期について詳しく聞いた。2:8 そして、「行って幼子について詳しく調べ、見つけたら知らせてもらいたい。私も行って拝むから」と言って、彼らをベツレヘムに送り出した。2:9 博士たちは、王の言ったことを聞いて出て行った。すると見よ。かつて昇るのを見たあの星が、彼らの先に立って進み、ついに幼子のいるところまで来て、その上にとどまった。2:10 その星を見て、彼らはこの上もなく喜んだ。2:11 それから家に入り、母マリアとともにいる幼子を見、ひれ伏して礼拝した。そして宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた。2:12 彼らは夢で、ヘロデのところへ戻らないようにと警告されたので、別の道から自分の国に帰って行った。 東方の博士は三人いたと推測されますが、ヘンリー・ヴァン・ダイクが書いた小説の中には「もう一人の博士」という話があります。もう一人の博士の名前はアルタバンで職業は医師でした。火災によって愛する家族を失ってから、星を研究していたある日、メシアの星を見て礼拝することを心に決めます。ささげものとしてサファイア、ルビーと真珠を用意しました。 出発する日にアルタバンは道ばたで死にかかっているお年寄りに会います。彼の最期を見届けたため、出発の約束時間に遅れてしまいます。アルタバンはサファイアを売ってラクダを買い一人で出発します。ベツレヘムに着いたとき、すでにキリスト・イエスは生まれ、3人の博士は礼拝をささげた後でした。 アルタバンは、キリストと会えず、避難のためエジプトに下る赤ん坊イエスとすれ違います。その道でヘロデの兵士たちの幼児虐殺をするのを見て、自分が持っていたルビーを賄賂として与え、母さんと赤ちゃんたちを救いました。 最後に残った真珠も貧しい人々に分けて与え、病気の人を治療しながら貧しい町に20年間とどまります。そんなある日、自分では治せなかった盲目の少年が、エルサレムでイエスに会い、目を開けてもらったという叫びを聞きます。 アルタバンは同行していた奴隷を解放し、イエスに会うために旅を再開します。最後の晩餐をされた家に辿り着いたのですが、イエス・キリストはいませんでした。ゲッセマネに行ってみましたが、ペテロが一人で泣いているだけでした。イエス・キリストは十字架を背負ってゴルゴタの丘を歩いていました。 年を取って弱まったアルタバンは倒れ、死境をさまよっていたときに、復活したイエス・キリストが現れました。いよいよイエスに出会ったのです。アルタバンはイエス・キリストに言います。「申し訳ありません。礼拝したいのですが、もうささげものがありません。」 イエス・キリストは言われました。「わたしはあなたがささげた贈り物をすべて受け取りました。死にかけていたヘブライの老人を大切にしてくれたこと、ベツレヘムの赤ちゃんとお母さんたちを死から救ってくれたこと、貧しい村の病気の人を助けてくれたこと、奴隷を自由の身に解放したこと、そして故郷の友人の一人娘を救ってくれたことです」と言われました。 アルタバンはその言葉を聞いて息を引きとりました。小説を書いたヘンリー・ヴァン・ダイクは牧師でもありました。「もう一人の博士」の礼拝は、人生全体を通してささげた礼拝であり、その人生は、神様が受けとるようなものでした。アルタバンはやがてメシアを拝みました。この話が単なるフィクションに聞こえないのは、アルタバンの人生が、キリストの人生と最も似ているからです。