ルカの福音書 QT20 22031月【娘よ】ルカ 8章 40~56
ルカ 8章 40~568:40 さて、イエスが帰って来られると、群衆は喜んで迎えた。みなイエスを待ちわびていたのである。8:41 すると見よ、ヤイロという人がやって来た。この人は会堂司であった。彼はイエスの足もとにひれ伏して、自分の家に来ていただきたいと懇願した。8:42 彼には十二歳ぐらいの一人娘がいて、死にかけていたのであった。それでイエスが出かけられると、群衆はイエスに押し迫って来た。8:43 そこに、十二年の間、長血をわずらい、医者たちに財産すべてを費やしたのに、だれにも治してもらえなかった女の人がいた。8:44 彼女はイエスのうしろから近づいて、その衣の房に触れた。すると、ただちに出血が止まった。8:45 イエスは、「わたしにさわったのは、だれですか」と言われた。みな自分ではないと言ったので、ペテロは、「先生。大勢の人たちが、あなたを囲んで押し合っています」と言った。8:46 しかし、イエスは言われた。「だれかがわたしにさわりました。わたし自身、自分から力が出て行くのを感じました。」8:47 彼女は隠しきれないと知って、震えながら進み出て御前にひれ伏し、イエスにさわった理由と、ただちに癒やされた次第を、すべての民の前で話した。8:48 イエスは彼女に言われた。「娘よ、あなたの信仰があなたを救ったのです。安心して行きなさい。」8:49 イエスがまだ話しておられるとき、会堂司の家から人が来て言った。「お嬢さんは亡くなりました。もう、先生を煩わすことはありません。」8:50 これを聞いて、イエスは答えられた。「恐れないで、ただ信じなさい。そうすれば、娘は救われます。」8:51 イエスは家に着いたが、ペテロ、ヨハネ、ヤコブ、そしてその子の父と母のほかは、だれも一緒に入ることをお許しにならなかった。8:52 人々はみな、少女のために泣き悲しんでいた。しかし、イエスは言われた。「泣かなくてよい。死んだのではなく、眠っているのです。」8:53 人々は、少女が死んだことを知っていたので、イエスをあざ笑った。8:54 しかし、イエスは少女の手を取って叫ばれた。「子よ、起きなさい。」8:55 すると少女の霊が戻って、少女はただちに起き上がった。それでイエスは、その子に食べ物を与えるように命じられた。8:56 両親が驚いていると、イエスは、この出来事をだれにも話さないように命じられた。 本文でイエス様が二人の女性を救われます。女性の名前は不明ですが、ただ一人は12歳で、その父はユダヤ人の会堂司ヤイロです。もう一人の女性は長血をわずらっている病気の人です。12歳の少女が病気になって死にかかっています。父ヤイロは、イエス様に駆け寄って助けを求めました。それでイエス様はヤイロの家に向かわれます。 この話が終わる前にもう一人の女性が出てきます。彼女は12年間長血をわずらい、すべてを失ったかわいそうな人でした。長血というのは、下血が止まらない婦人病です。12年間、いわば不正な病気にかかって疎外されたので、家族も財産も残っていなかったと思います。彼女は少なくとも中年です。ヤイロよりも年うえかもしれません。一人は12歳の少女で、もう1人は12年を闘病した中年の女性です。二人ともその事情が悲しいです。少女は幼くて悲しく、中年の女性はその長い喪失の時間が悲しいです。 長血の女性が人々の間に手を差し出してイエス様の裾に触れました。ヤイロがイエス様なら娘を生かされると思ったように、女性もイエス様の服に触れることだけて癒されるという信仰を持っていたからです。女性がイエス様の裾に触れた時、イエス様がその場で止まりました。おそらくイエス様が止まってからすぐに話をした人はヤイロだったとおみます。 「イエス様!なぜ、止めますか?時間がないです。私の娘が死んでいきます。急いで行かなければなりません。」 この女性は、イエス様の前に出てきて、恐れています。長血にわずらっていたので、ぼろぼろの女性の服には血痕が付いていたかもしれません。女性は人々が注目している中で身の置く所なく立っていました。ヤイロは娘のためにイエス様を促していましたが、このの女性のために何かをしてくれる人は誰もいませんでした。女性は、そんな悲しみの中で幼いごろのお父さんを思い出したかもしれません。この女性も12歳の時があったでしょう。お父さんはもうすでに亡くなり、娘も老いて病気です。自分のために泣いてくれる、助けてくれるお父さんはいません。うんざりしていたかもしれません。 死んでいく娘を生かしてもらいたいと隣で促しているヤイロ、老いて頼るところのない病気の女性、その間に立っていたイエス様がこの女性を呼びます。「娘よ」と呼ばれます。イエス様が娘よ!と呼ばれたのは、病気だけを見たのではなく、心も見たことです。イエス様は「娘」の体と心を癒した後、ヤイロの娘も生かします。かわいそうな女性に「娘」と呼んだイエス様の声帯の響きが耳元に長く残っていました。