Ⅰ列王記 黙想 【老ダビデのうめき声】 20240401(月) 枝川愛の教会 趙鏞吉 牧師
Ⅰ列王記 1:1~10 1:1 ダビデ王は年を重ねて老人になっていた。そのため衣をいくら着せても温まらなかった。 1:2 家来たちは王に言った。「王のために一人の若い処女を探し、御前に仕えて世話をするようにし、王の懐に寝させて王が温まるようにいたしましょう。」 1:3 こうして彼らは、イスラエルの国中に美しい娘を探し求め、シュネム人の女アビシャグを見つけて、王のもとに連れて来た。 1:4 この娘は非常に美しかった。彼女は王の世話をするようになり、彼に仕えたが、王は彼女を知ることがなかった。 1:5 ときに、ハギテの子アドニヤは、「私が王になる」と言って野心を抱き、戦車、騎兵、それに自分の前に走る者五十人を手に入れた。 1:6 彼の父は、「おまえは、どうしてこんなことをしたのか」と言って、彼のことで心を痛めたことは一度もなかった。そのうえ、彼は非常に体格も良く、アブサロムの次に生まれた子であった。 1:7 彼がツェルヤの子ヨアブと祭司エブヤタルに相談をしたので、彼らはアドニヤを支持するようになった。 1:8 しかし、祭司ツァドクとエホヤダの子ベナヤと預言者ナタン、それにシムイとレイ、およびダビデの勇士たちは、アドニヤにくみしなかった。 1:9 アドニヤは、エン・ロゲルの近くにあるゾヘレテの石のそばで、羊、牛、肥えた家畜をいけにえとして献げ、王の息子たちである自分のすべての兄弟たちと、王の家来であるユダのすべての人々を招いた。 1:10 しかし、預言者ナタン、ベナヤ、勇士たち、そして自分の兄弟ソロモンは招かなかった。 ダビデが老いて衰えました。ユダ政府はダビデ王のために美しい処女のアビシャグを選び、ダビデに仕えさせました。その頃、ダビデは政治的危機に直面します。アブサロムに続いて、もう一度息子が反逆を起こしたからです。老いた王に向けて反逆を起こしたということは、次期王権に決まっていないもう一人の王子による乱ということでしょう。 ダビデはソロモンを次期王に内定しており、権力欲を持ったアビシャグが軍部の実力者のヨアブと祭司長のエブヤタルとともに軍隊を動員して反乱を起こしたのです。反乱を謀議したヨアブとエブヤタルは、二人ともダビデに大きなお世話になった人々です。ダビデには息子の裏切りに劣らない大きな裏切りだったと思います。 ダビデの老年の人生が平和であれば良かったと思いますが、ダビデはまたひどい目にあわなければなりません。子どもが親を相手に反乱を起こすことを繰り返して受けたので、ダビデの心がどれほど痛かったのでしょうか?確かに、政治と権力の世界では、親子の間でも刃傷沙汰におよびます。権力を貪るためでもありますが、権力の世界の中に入れば、それはすでに生存の問題になり、権力を奪われると政敵にやられるので、嘘も、欺瞞も、裏切りも、暴力も、生き残るための必死の努力です。 若いダビデが権力に酔っている時、部下の妻バテ・シェバを貪ったことからダビデの人生には大きな屈折が生じました。その代価としてダビデの家に剣が離れないと言われた予言は、実際となり、ダビデは自分の家庭史の中で血の涙を流さなければなりませんでした。晩年のアドニヤの反逆も、まだ終わっていないダビデ家の剣という責任の現在進行形です。 ダビデは若くて美しいアビシャグと寝ることはしなかったと言いました。老いて力がないからと思われるかもしれませんが、実はそうではなかったと思います。性欲とは、生殖機能ではなく、脳の機能です。気力がなかったからではなく、老年のダビデには悔恨があったので謹慎したことでしょう。それが神様の前でどれほど大きな罪であり、隣人をどれほど苦しめたことかを懺悔したためだと思います。ダビデは悔恨の謹慎をしますが、子どもの問題についてはできることが何一つありませんでした。