Ⅱサムエル 2:12~322:12 ネルの子アブネルは、サウルの子イシュ・ボシェテの家来たちと一緒にマハナイムを出て、ギブオンへ向かった。2:13 一方、ツェルヤの子ヨアブも、ダビデの家来たちと一緒に出て行った。こうして彼らはギブオンの池のそばで出会った。一方は池の手前側に、もう一方は池の向こう側にとどまった。2:14 アブネルはヨアブに言った。「さあ、若い者たちを出し、われわれの前で闘技をさせよう。」ヨアブは言った。「よし、そうしよう。」2:15 ベニヤミンの側、すなわちサウルの子イシュ・ボシェテの側から十二人、ダビデの家来たちから十二人が順番に出て行った。2:16 彼らは互いに相手の頭をつかみ、相手の脇腹に剣を刺し、一つになって倒れた。それで、その場所はヘルカテ・ハ・ツリムと呼ばれた。それはギブオンにある。2:17 その日、戦いは激しさを極め、アブネルとイスラエルの兵士たちは、ダビデの家来たちに打ち負かされた。2:18 そこに、ツェルヤの三人の息子、ヨアブ、アビシャイ、アサエルがいた。アサエルは野のかもしかのように、足が速かった。2:19 アサエルはアブネルの後を追った。右にも左にもそれずに、アブネルを追った。2:20 アブネルは振り向いて言った。「おまえはアサエルか。」彼は答えた。「そうだ。」2:21 アブネルは彼に言った。「右か左にそれ、若い者の一人を捕らえ、その者からはぎ取れ。」しかしアサエルは、アブネルを追うのをやめず、ほかへ行こうとしなかった。2:22 アブネルはもう一度アサエルに言った。「私を追うのはやめ、ほかへ行け。なぜ、私がおまえを地に打ち倒さなければならないのか。どうやって、おまえの兄ヨアブに顔向けができるというのか。」2:23 アサエルはなおも拒んで、ほかへ行こうとしなかった。それでアブネルは、槍の石突きで彼の下腹を突いた。槍はアサエルを突き抜けた。アサエルはその場に倒れて、そこで死んだ。アサエルが倒れて死んだ場所に来た者はみな、立ち止まった。2:24 しかしヨアブとアビシャイは、アブネルの後を追った。太陽が沈んだとき、彼ら二人はギブオンの荒野への道を通り、ギアハの反対側にあるアンマの丘までやって来た。2:25 ベニヤミン人はアブネルに従って集まり、一団となって、一つの丘の頂に立った。2:26 アブネルはヨアブに呼びかけて言った。「いつまでも剣が人を食い尽くしてよいものか。その果ては、ひどいことになるのを知らないのか。いつになったら、兵たちに、自分の兄弟たちを追うのをやめて帰れ、と命じるつもりか。」2:27 ヨアブは言った。「神は生きておられる。もし、おまえが言い出さなかったなら、確かに兵たちは、明日の朝まで、それぞれ自分の兄弟たちを追うのをやめなかっただろう。」2:28 ヨアブは角笛を吹いた。それで兵たちはみな立ち止まり、それ以上イスラエルの後を追わず、戦いを続けることはなかった。2:29 アブネルとその部下たちは、一晩中アラバを通って行った。そしてヨルダン川を渡り、午前中歩き続けてマハナイムに着いた。2:30 一方、ヨアブはアブネルを追うのをやめて帰った。兵たちを全部集めてみると、ダビデの家来十九人とアサエルがいなかった。2:31 ダビデの家来たちは、アブネルの部下であるベニヤミン人のうち三百六十人を討ち取っていた。2:32 彼らはアサエルを運んで、ベツレヘムにある彼の父の墓に葬った。ヨアブとその部下たちは一晩中歩いて、夜明けごろヘブロンに着いた。 ダビデが治めるユダ王国の軍隊長官ヨアブとイスラエル軍の実力者アブネルが国境で衝突します。ダビデとイシュ・ボシェテは戦いに出ませんでしたが、双方の軍実力者の戦いです。ここで、ヨアブが率いたダビデ側が勝ちます。 ところが、ヨアブの末弟のアサエルが功労心か、勝負根性か、逃走するアブネルを無理に追いかけていきます。アサエルは自分の速い足を信じていました。それでアブネルに追いつくことはできましたが、アブネルには勝てません。なぜならアブネルは戦争に慣れている老練な軍人だからです。 アブネルがアサエルに自分を追いかけるなと言いましたが、それは、ヨアブの家族を殺して緊張関係を深めたくなかったからです。しかし、アサエルは追撃を止めず、アブネルはついに遭遇したアサエルを殺します。 ダビデなしで登場した人々、アブネルの自尊心、ヨアブの怒り、アサエルの血気が分裂した王国にさらに破裂音を出します。アサエルのオーバーアクションは軍事緊張感を高め、ヨアブはついに復讐するでしょう。そのためにまた別の問題が発生します。力が与えられれば高ぶります。高慢になった軍人の自尊心と血気が同族間の悲劇の火種になります。